カテゴリ:アートの楽しみ( 108 )

《サロン絵画》とかけて《消防士の絵》と解く???

サロン絵画とはブグロー、ジェローム、カバネルらに代表される19世紀後半のアカデミックな絵画のことです。
では、アカデミック絵画のことをなぜサロン絵画とよぶのでしょうか?
それは、アカデミック芸術の殿堂フランス王立絵画彫刻アカデミーが主催する展覧会、いわゆる官展がルーブル宮殿の《サロン・カレ(方形の間)》で開催されたので官展のことがサロンと呼ばれるようになったことに由来します。

このサロン絵画はまたアール・ポンピエ(art pompier)と呼ばれることがあります。
フランス語ですが、アール(art)=アート、ポンピエ(pompier)は消防士、すなわち消防士のアート!!!
なぜ?
サロン絵画がよくあつかった歴史画のなかに登場する古代ギリシア・ローマ戦士のヘルメットが当時のフランスの消防士がかぶっていたヘルメットによく似ていたことに由来する呼び名なんですね。空虚で時代がかった大画面の歴史画を揶揄する一種の蔑称でした。

印象派の革命以降、形式ばってリアリティーがないと批判されて忘れ去られていたアール・ポンピエですが、最近ではジェロームの絵画がハリウッド映画のスペクタクル大作のインスピレーションの源として再評価されたりしています。

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ジェローム 《指し下ろされた親指》(ブーイング)  1872年



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by redoutehugos | 2019-01-15 16:21 | アートの楽しみ

美しすぎるサロン絵画(8)  ウィリアム・ブグロー(5) プティ・パレ美術館の展覧会

ボンジュール!
こんにちは。

私がブグローの実物をみたのは1971年に神奈川県立美術館で開催された《ボルドー美術館名作展》に出展されていた《バッカイ》が最初でした。

後年、ボルドーに住むようになってこの《バッカイ》との再会を果たしました。わたしにとってなかなか縁の深い絵画のひとつです。

その後、ブグローの絵を大量に見ることができたのは、1984年にパリのプティ・パレ美術館で開催された《William Bougreau》展です。この展覧会には油彩、素描で140点を超える作品が出展されていました。この展覧会はモントリオール美術館(カナダ)、ワズワース・アセニアム美術館(アメリカ)へと巡回し、国際的なブグロー再評価のきっかけとなりました。

写真はその展覧会のカタログで。表紙の絵は1884年作の《バッカスの青春》の部分。奇しくもこれも《バッカイ》と同じくバッカスからみの絵ですが、3.31x6.1mという大作です。

ブグローはアカデミーを代表する画家らしく、伝統的な油絵の制作過程を遵守し、木炭や油彩による習作を念入りに準備しました。
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《バッカスの青春》の木炭による習作 25 x 41.5 cm
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《バッカスの青春》の油彩による習作  32.5 x57.5cm




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by redoutehugos | 2019-01-12 17:29 | アートの楽しみ

美しすぎるサロン絵画(7)  ウィリアム・ブグロー(4)

ボンジュール!
こんにちは。

神話画、歴史画、寓意画なんでも描ける高度な絵画技術を誇ったブグローはグーピル画廊などと契約して愛らしい少女像などの商業的な作品いわゆる風俗画もたくさん描きました。グーピル画廊と言えば、ゴッホの弟テオが働いていたことでも有名ですね。

ブグローが描く少女たちは華美な服装はせず、ほとんどが農村風景の中に佇んでいます。
ただ、農村に生きる生活感は微塵もなく、人も風景も借り物感が強くてリアリティーが感じられません。写真館で自然風景の書き割りをバックに農民のコスチュームで記念写真をとっているブルジョアの子供のようです。

そのリアリティーのなさが印象派などの新興勢力から批判されたところですが、これだけ綺麗に仕上げられた絵ならそれはそれでいいんじゃないのかという気になるくらいの技巧と完成度を誇っています。
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ブグロー  《ぶどうの収穫》  1875年

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ブグロー 《小川のほとりで》  1875年

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by redoutehugos | 2019-01-11 12:21 | アートの楽しみ

美しすぎるサロン絵画(6)  ウィリアム・ブグロー(3)

ボンジュール!
こんにちは。

今をさること50年近く前に、神奈川県立美術館の《ボルドー美術館名作展》で見たブグローの実物《バッカイ》、その巧さと迫力は尋常ならざるものがありましたが、そのあたりの感動については私の畏友(先輩ですが)、イッキ描きの画家・菊地理氏のブログの文章がお薦めです。→ こちらからどうぞ

フランス絵画史上でも巧さだけなら(「だけ」と言っても、この巧さが大変です)超トップクラスのブグロー(もしかしたら一番うまいかも・・・)ですが、印象派の擡頭とともに評価が凋落し、やがて忘れ去られた存在になってしまいます。こんなに絵がうまくて、完成作だけでも900点近くを残しているブグローでもそんなことになってしまうのです。世の中、厳しいですね。

それでもさすがにこれだけの作品を描き、残した画家です。没後80年近くたった1984年にパリのプティ・パレ美術館で開催された回顧展をきっかけに、ブグローの再評価が進み、一般への認知度も上昇しています。

この《アモルとプシュケー》も美しいと言えばほんとに美しい絵ですが、ほとんど赤ん坊のような男の子が女の子の頬にキスしている・・・おまけに両方とも背中に羽がはえている・・・変な絵と思えば相当変な絵ですよね。

古代神話のアモールとプシュケのテーマは通常若い男女の姿で描かれます。
でも、アモル(クピド)が愛の矢を射るキューピッドとして描かれるときは子供の姿で描かれることが多いのです。一般にはアモルは羽の生えた子供として知られているので、ブグローはその姿に合わせてプシュケーも子供に描いたんでしょうね。
もっとも、ブグローは大人の男女としてのアモルとプシュケーのバージョンも何枚も描いています。
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ブグロー 《アモルとプシュケー、子供たち》 1890年


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ブグロー 《プシュケーの恍惚》  1893年頃


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by redoutehugos | 2019-01-10 18:45 | アートの楽しみ

美し過ぎるサロン絵画(5) ウィリアム・ブグロー(2)

ボンジュール!
こんにちは。

私が初めてブグローという画家知ったのは、まだ10代の頃に読んだH.W.ジャンソンの「絵画の歴史」という本によってでした。

そこに、先日このブログでご紹介したブグローの《青春》が小さな白黒写真で掲載されていたのです。著者のジャンソンはブグローのアカデミックな絵画がいかに魅力のないものかを語っていましたが、私にはとにかくその描写力、描かれている美し過ぎる人物とこの世のものとは思えない美しい情景(そこが作り物として、リアリティーのなさと批判の的にもなっているのですが)のインパクトがあまりに強かったのでした。

それ以来、ブグローの実物を見たい、少なくともカラー図版をみたいとの思いに駆られていましたが、今と違ってインターネットなどという超便利なものはなかった時代です。カラー図版と出会えることさえいつのことになるかという感じでした。ところが、なんとブグローの実物を見られる機会がすぐにやってきたのです。1971年に神奈川県立美術館で開催された《ボルドー美術館名作展》という展覧会でブグローの絵と出会ってしまいました!それがこの絵《バッカイ》です。なんたる僥倖!願えば叶うとはこのことですね。

ちなみにバッカイとはブドウ酒の神バッカスの豊穣のお祭りの裏で行われる秘儀の中で半狂乱になって踊り狂う熱狂的な信者の女性のことです。また、牡山羊はバッカスの聖獣です。
ボルドー縁の画家ブグローの手になる、ブドウ酒の神バッカスにちなんだこの絵はボルドー美術館にぴったりなんですね!



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ブグロー  《バッカイ》  1862年

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by redoutehugos | 2019-01-09 11:20 | アートの楽しみ

美しすぎるサロン絵画(4)ウィリアム・ブグロー

ボンジュール!
こんにちは。

今日は印象派嫌いで知られるサロン絵画界3巨頭の真打ちウィリアム・ブグローの登場です!
まさに美しすぎるサロン絵画の代表です。
その超絶技巧とも言える描写力で膨大な数の天使や裸婦可憐な少女像を描きまくりました。
そのどれもが完成度が高くどれがブグローの代表作とは言いがたいのですが、一番有名なのはやっぱりオルセー美術館にある《ヴィーナスの誕生》でしょうか?

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《ヴィーナスの誕生》 1879年  オルセー美術館

先日ご紹介したカバネルの《ヴィーナスの誕生》に比べるとやたら裸の人の数が多いですね!
当時人気のあった官能的な裸婦像を描くにはヴィーナス画でなければならなかった訳ですが、そんな当時のサロンの状況をドーミエは《今年もまたヴィーナス、いつもヴィーナスばっかり!》と題された版画で皮肉っています。
詳しくは以前のブログをご参照ください → こちら

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ドーミエ  《今年もヴィーナス、いつもヴィーナスばかり!》

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by redoutehugos | 2019-01-08 20:09 | アートの楽しみ

美しすぎるサロン絵画(3)

ボンジュール!
こんにちは。

《ヴィーナスの誕生》が有名な、サロン絵画の巨匠カバネルですが、こんな絵もあります。
《オフィーリア》です。

《オフィーリア》はイギリス、ラファエル前派のジョン・エヴァレット・ミレーの傑作があまりにも有名ですね。
ミレイの絵では、悲しみのあまり正気を失い、川に落ちてしまったことにも気づかない様子で歌を口ずさみながらが静かに流されていくオフィーリアの様子が静謐な画面の中に記念碑的に描かれています。

カバネルの方は、気がふれたオフィーリアが柳の小枝に花環をかけようとして川に落下する瞬間を描いています。
ミレイの絵に比べると植物の描写があっさりし過ぎの感はありますが、どこか遠いところを見つめる、もはやこの世の人ではなくなってしまったようなオフィーリアの顔が印象的です。
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               カバネル  《オフィーリア》  1883年

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               ミレー  《オフィーリア》  1852年

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by redoutehugos | 2019-01-07 17:36 | アートの楽しみ

美しすぎるサロン絵画(2) カバネル

ボンジュール!
こんにちは。

印象派嫌いで有名な(?)のサロン絵画の3巨頭ジェローム、カバネル、ブグロー、今日はカバネル(1823〜1889)の登場です。
彼の代表作はオルセー美術館所蔵の《ヴィーナスの誕生》で、19世紀アカデミック絵画の代表作とも見なされています。
2017年に国立新美術館で開催された《オルセー美術館展、印象派の誕生ー描くことの自由ー》にもきていましたから、見覚えのある方も多いのでは?

この絵は1863年のサロン(官展)で絶賛されました。
カバネル40歳、脂ののりきった時の傑作(?)です。

この時のサロンは審査が厳しく、落選させられた画家の不満が異常にたかまりました。
そこでナポレオン3世が開いたのが《落選展》。
不名誉なタイトルの展覧会ですが、そこに出展されたマネの《草上の昼食》が大非難の的となり、スキャンダルを
引き起こし、印象派誕生の道を開いたというストーリーになります。
スキャンダルを乗り越えて歴史の中でオーソドックスになるというパターンですね。

ということで、カバネルの《ヴィーナスの誕生》とマネの《草上の昼食》は当時の両極端な評価を得た絵画だったんですね!
現代の私たちから見ると、カバネルの《ヴィーナスの誕生》の方があられもない裸婦のポーズという観点からするとよっぽど
スキャンダルになりそうですが・・・これは《絵画鑑賞講座》でぜひ比較鑑賞してみる必要がありそうです!


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               カバネル 《ヴィーナスの誕生》 1863年

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マネ  《草上の昼食》  1863年





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by redoutehugos | 2019-01-05 11:35 | アートの楽しみ

美しすぎるサロン絵画(1) bis

ボンジュール!
こんにちは。

昨日ご紹介した印象派嫌いの最右翼の一人ジェローム(1824-1904 )の先生は
ドラローシュ(1797-1856)というロマン派の画家です。
ドラローシュと聞いてもピンと来る人は少ないと思いますが、
生前はアングルやドラクロワに匹敵する名声を誇っていました。
そんなドラローシュもジェローム同様、今では歴史の彼方に忘れられた画家の
一人でした。
(「忘れられた」と言ってもあくまでも生前の盛名に比べればということですが)

ドラローシュの名前は知らなくても、次の絵に見覚えのある多いのではないで
しょうか?
一昨年に上の森美術館で開催され話題を呼んだ《怖い絵展》のメインビジュアル
に使われて大動員に一役買った絵です!
実はこの絵《レディ・ジェーン・グレイの処刑》の作者がドラローシュです。
イングランドの初代女王の座についたものの、9日後にはメアリー1世に廃位さ
せられ、半年後には17歳の若さで処刑されたレディ・ジェーン・グレイの処刑場
面という悲劇的なテーマに多くを負っているとはいえ、その訴求力は現代でも通
用するもののようですね。

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《レディ・ジェーン・グレイの処刑》  
1833年 ロンドン、ナショナル・ギャラリー


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by redoutehugos | 2019-01-04 12:30 | アートの楽しみ

美しすぎるサロン絵画(1)

1月のよみうりカルチャー絵画鑑賞講座(恵比寿、大森、川崎、八王子)
のテーマは《印象派vs美し過ぎるサロン絵画》です。

この講座で印象派の前に立ちはだかったサロン絵画を代表するのはブグロー、ジェローム、カバネルの3人です。

ジェロームは原田マハさんの小説《たゆたえども沈ます》の中にも何度も登場して、ゴッホの弟テオに
「印象派の絵なんか扱うのはやめろ!そうしないとろくなことにはならないぞ!」とプレッシャーをかけます。
憎まれ役ですね!
彼はテオが勤めていたグーピル商会という画廊の大事な売れっ子画家で、おまけに経営者グーピルの娘婿でした。
そして大邸宅を構えて大画家然とした生活振りだったようです。
ですが、印象派嫌いがたたったのか、死後はすっかり忘れ去られてしまいます。

そんなわけで、日本でジェロームの名前を知っている人はほとんどいないと思いますが、それでも彼の代表作
《ピグマリオンとガラテア》は時々本の表紙に使われていたりするので、見覚えがある方もいるのでは?
現実の女性に失望して、自らが彫刻した理想の女性ガラテアに恋をするピグマリオン。
その想いがかなって彫像に生命が吹き込まれていく瞬間を描いています。
なるほど、上半身には血が通い始めて肌色に変わっていますね。
見事と言えば見事な絵ですが・・・
ちなみに、ジェロームは彫刻家として一家をなしています。
そんな彼にピッタリのテーマです。
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ピグマリオンとガラテア 1890年 メトロポリタン美術館



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by redoutehugos | 2019-01-03 18:52 | アートの楽しみ